舌切りすずめ むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは毎日山へしばかりに行きました。山で、おじいさんはおばあさんが作ったお弁当を木の枝につるして仕事をしていました。ある日、お昼になっておじいさんがお弁当を食べようとして、ふろしきをといてみてびっくりしました。その中にすずめがいちわいねむりをしていたのです。お弁当がなくなっていたので、すずめがぜんぶ食べて昼ねをしていたわけだとわかりました。おじいさんはそのかわいいすずめをもって家に帰りました。 おじいさんとすずめはとてもなか良くなって、いつもいっしょにいました。仕事の時も、食事の時もすずめはおじいさんのまわりをとんだり、おじいさんのかたにのったりしていました。おじいさんはその大すきなすずめに「ちょん」と名づけてかわいがって、あそんであげました。ある日、おじいさんは家にちょんをおいて山へでかけました。おばあさんはのりを作って、川へせんたくに行きました。ちょんはのりが大すきで、少しだけなめてみました。きっとおばあさんにおこられてしまうと思いましたが、のりがうまくてもうがまんできずに、すずめは全部なめてしまいました。 おばあさんは川から帰ってきました。自分の作った大切なのりがなくなってしまったので、おばあさんはたいへんおこりました。おばあさんは 「だれがわたしの大切なのりを食べた。」 と言って、ちょんの口を見るとのりがいっぱいついていました。 「このわるいすずめ!」 とさけび、おばあさんはちょんをつかまえました。そして、はさみですずめの舌をちょん切り、外へ追い出しました。かわいそうなちょんはとんで行きました。しばらくしておじいさんは山から帰ってきて、「ちょん、ちょん」とよびましたが、大すきなすずめのすがたが見えません。 「おばあさん、ちょんはどこにいる。」 とききましたが、おばあさんは 「あのわるいすずめがわたしの大切なのりを食べたから舌をちょん切って追い出してやった。」 と答えました。おじいさんは 「何ということだ。それはばあさんがわるいぞ。」 と言って、ちょんをさがしにでかけました。 おじいさんは歩きまわって、川について牛洗いに会いました。 「牛洗いどん、舌切りすずめを見なかったか。」 とおじいさんがたずねました。 「見た、見た。でも、牛の洗い水を七杯のまないと教えないぞ。」 と牛洗いが言いました。おじいさんは、すずめに会いたく一心できたない水を七杯、がまんしてのみました。そして牛洗いは 「その道をつづけていって、馬洗いどんに聞けばよい。」 と教えました。おじいさんは歩きつづけて、馬洗いがいるところにつきました。 「馬洗いどん、舌切りすずめを見なかったか。」 とおじいさんはたずねました。 「見た、見た。でも、馬の洗い水を七杯のまないと教えないぞ。」 と馬洗いが答えました。おじいさんはまたきたない水を七杯、のみました。そして馬洗いは 「その山道を歩いて、竹やぶに行けば、すずめのやどがある。」 と教えました。おじいさんは山道を歩いて、竹やぶに入りました。 おじいさんはすずめのやどについて、 「ちょん、おばあさんがわるかった。あやまりにきた。」 と言いました。おじいさんの大すきなすずめは、よろこんで、おじいさんをまねき入れ、ごちそうしました。おじいさんとちょんはおたがいいにうれしくて、いろいろな話をしました。おじいさんはちょんを家につれて帰ろうとしましたが、すずめは 「もうおばあさんのところには行きません。」 とことわりました。おじいさんはさびしくなりましたが、ちょんのきもちがよくわかりました。そして、おじいさんが 「じゃあ、もう帰る。」 と言うと、すずめはつづらを二つもってきました。 「おじいさん、おみやげをもって帰って下さい。大きなつづらと小さなつづらと、どちらかをえらんでください。」 おじいさんは 「おれはとしよりだから、小さい方がいい。」 と言って、つづらをせおって家に帰りました。家について、おじいさんとおばあさんがつづらをあけてみるとびっくりしました。つづらの中に、金や銀やたからものいっぱい入っていたのです。おじいさんがおばあさんにくわしくたびのことを話すと、おばあさんはおこりました。 「何で小さなつづらをえらんだの。わたしが行って大きなつづらをもらってくる。」 とおばあさんが言いました。 おばあさんはおじいさんに教えてもらった道を歩いていって、牛洗いのところにつきました。 「牛洗いどん、舌切りすずめを見なかった。」 とおばあさんがたずねると、牛洗いが 「見た、見た。でも、牛の洗い水を七杯のまないと教えないぞ。」 と言いました。するとおばあさんはおこって、 「なんて、きたない水。道を知っているからのまないよ。」 と言って、馬洗いのところに行きました。同じように、おばあさんは洗い水をのまずに道をつづけて行って、すずめのやどにつきました。すずめが 「おばあさん、どうして来たんですか。」 とたずねると 「ずっとおまえのめんどうを見ていたから、たずねてきた。」 とおばあさんは答えました。舌切りすずめはごちそうしましたが、おばあさんは 「あまりひまがないので、おみやげをもらって帰る。」 と言いました。すずめはつづらを二つもってきて 「大きなつづらと小さなつづらと、どちらでもすきなものをどうぞ。」 と言いました。おばあさんは 「わたしは足がたっしゃだから、大きなつづらをもらう。」 と言って、おもいつづらをせおってすずめのやどを出ました。しばらく歩いていると疲れてきたので、一休みすることにしました。おばあさんはつづらの中にあるたからものが見たくなりました。すずめは 「家につく前につづらをあけてはいけません。」 とねんをおしていましたが、おばあさんはもうがまんできずに、つづらをあけてしまいました。するとつづらの中から、へびやむかでやばけものいっぱい出てきました。おそろしさのあまりに、すずめの舌を切ったおばあさんのいきのねが、止まってしまいました。